民泊の始め方|個人が届出から開業までにやること【2026年】

民泊の始め方とは、住宅宿泊事業法(民泊新法)・旅館業法(簡易宿所営業)・国家戦略特区法(特区民泊)のいずれかを選ぶことから始まります。届出または許可の手続きを終え、運営を始めるまでの一連の流れを指します。観光庁の民泊制度ポータルサイトによると、住宅宿泊事業の届出件数は65,837件(現存する届出住宅は42,070件、令和8年7月15日時点)という規模です。法人だけでなく、個人が届出主体になっているケースも珍しくありません。

この記事でわかること

  • 3つの制度(民泊新法・旅館業法・特区民泊)の違いと選び方
  • 届出前に潰しておきたい確認事項(用途地域・自治体の上乗せ条例・管理規約・賃貸借契約)
  • 始めてから効いてくる運営の注意点(清掃導線・鍵の受け渡し・近隣説明)

筆者は本記事の執筆にあたり、観光庁の民泊制度ポータルサイトと厚生労働省の旅館業法関連ページを確認し、公開されている統計と条文の要旨を整理しました。2026年8月時点の情報をもとに、みんぱくマップでは一棟貸し民泊4施設を運営してきた立場から、制度選びから開業準備までの手順をまとめます。

民泊の始め方とは?3つの制度の違いから理解する

民泊の始め方でまず決めるべきなのは、住宅宿泊事業法(民泊新法)・旅館業法(簡易宿所営業)・国家戦略特区法(特区民泊)のどの制度で運営するかです。

観光庁の民泊制度ポータルサイトによると、住宅宿泊事業法は届出制の制度で、年間提供日数の上限は180日と定められています。※この180日は全国一律の上限で、地域の実情を反映する仕組みも設けられているため、自治体によっては条例でさらに短い期間に制限している場合があります。届出だけで開始できる手軽さが特徴ですが、通年で稼働させることはできません。

一方、旅館業法に基づく許可(簡易宿所営業など)を取得すれば、日数の上限なく運営できます。厚生労働省の旅館業法のページによると、許可を受けるには施設の構造設備が建築基準法・消防法令の基準を満たす必要があります。住宅をそのまま使うだけでは、基準に届かないことも珍しくありません。

もう一つの選択肢が特区民泊です。国家戦略特区法に基づき、条例を定めた指定区域に限って認められている制度です。内閣府によると、平成28年1月に東京都大田区が全国に先駆けて取組を開始しました。観光庁のページによると、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき一定期間以上使用させる事業として位置づけられています。内閣府の資料によると、都道府県知事等(保健所設置市や特別区にあっては市長・区長)の認定を受ける仕組みになっています。

なぜなら、住宅宿泊事業法は年間提供日数の上限が180日と定められているため、通年で部屋を貸したい人には旅館業法の許可の方が向いている場合があるからです。逆に、まず小さく始めて反応を見たい個人には、届出だけで開始できる住宅宿泊事業法が選ばれやすい傾向があります。

一棟貸しや古民家を民泊として活用する場合の物件選びの基準は、一棟貸しとは?ホテル・旅館との違いと選び方でも詳しく整理しているので、あわせて確認してください。

制度ごとのメリット・デメリット比較

3つの制度にはそれぞれ明確なメリット・デメリットがあります。物件の使い方や稼働イメージに応じて、選ぶべき制度が変わります。

制度 メリット デメリット
住宅宿泊事業法(民泊新法) 都道府県知事等への届出のみで開始でき、住宅の構造を大きく変えずに運営しやすい 年間提供日数の上限が180日と定められている
旅館業法(簡易宿所営業など) 日数の上限がなく、通年での運営が可能 建築基準法・消防法令に適合する構造設備が必要で、許可取得のハードルが高い
特区民泊(国家戦略特区法) 対象区域では住宅宿泊事業法の日数上限を受けずに運営できる 対象区域が国家戦略特別区域のうち条例を定めた自治体に限られ(全国に先駆けて取組を開始したのは東京都大田区)、認定を受ける必要がある

厚生労働省の令和6年度衛生行政報告例の概況によると、令和6年度末(2025年3月末)現在の旅館業の施設数は98,338施設で、前年度に比べ4,863施設(5.2%)増加しています。内訳は旅館・ホテル営業52,946施設、簡易宿所営業44,901施設、下宿営業491施設です。

一方で、どの制度を選んでも共通して求められるのが、近隣住民への配慮と衛生管理の体制づくりです。

「衛生上の措置が講じられておらず、きちんと掃除されていない」

「事業に対して近隣住民の理解が得られていないために、宿泊中に近隣住民から苦情を受ける」

「鍵が適切に管理されていないために、安心して宿泊できない」

観光庁は、無許可・無届出の違法民泊で起きやすいトラブルの例としてこれらを挙げています(引用: 観光庁「民泊制度ポータルサイト」宿泊者向けページより)。

なぜなら、無許可で旅館業を営むと旅館業法違反となるからです。厚生労働省のQ&Aによると、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象になります。制度選びを後回しにして見切り発車で始めることは、個人にとって大きなリスクになります。

個人が民泊を始めるまでの手順(届出前に確認すべきこと)

民泊の届出前に確認する図面と書類のイメージ
用途地域・条例・管理規約の確認は、物件を契約する前に済ませておきたい工程です

個人が民泊を始める手順は、大きく分けて「制度選び」「届出前の確認」「申請・届出」「開業準備」の4段階です。業者が案内する一般的な手続きの流れだけでなく、契約前に潰しておくべき確認事項もあわせて紹介します。

  1. ステップ1: 制度を決める

    まず、前の章で比較した3制度のうち、どれで運営するかを決めます。年間の稼働イメージ(180日以内か通年か)と、物件の所在地が特区民泊の対象区域かどうかが最初の分かれ目になります。

  2. ステップ2: 用途地域を確認する

    物件が立地する用途地域を、自治体の都市計画課や公開されている都市計画図で確認します。住居専用地域など住宅宿泊事業自体が制限される区域もあるため、この確認を後回しにすると後の手続きがすべて無駄になりかねません。

  3. ステップ3: 自治体の上乗せ条例を確認する

    住宅宿泊事業法は全国一律の上限として180日を定めていますが、自治体によっては条例で実施可能な期間や区域をさらに制限しています。物件所在地の役所窓口で、上乗せ条例の有無を確認してください。

  4. ステップ4: 管理規約・賃貸借契約を確認する

    分譲マンションなら管理規約、賃貸物件なら賃貸借契約や貸主の承諾の有無を確認します。禁止する条項がある物件では、届出要件を満たしていても実施できません。

  5. ステップ5: 消防法令への適合を確認する

    自動火災報知設備や誘導灯など、消防法令上必要な設備が整っているかを所轄の消防署に確認します。旅館業法の許可を取る場合はもちろん、住宅宿泊事業法の届出でも一定の消防用設備の設置が求められます。

  6. ステップ6: 届出または許可申請を行う

    確認事項が整ったら、住宅宿泊事業法なら都道府県知事等への届出、旅館業法なら保健所への許可申請、特区民泊なら都道府県知事等への認定申請を行います。必要書類は制度ごとに異なるため、事前に窓口へ相談すると手戻りが少なくなります。

  7. ステップ7: 標識を掲示し、運営体制を整える

    住宅宿泊事業法の届出住宅には、法令で定められた標識の掲示が義務付けられています。家主不在型の場合は、衛生確保措置や近隣からの苦情対応などを住宅宿泊管理業者に委託することも義務付けられているため、委託先の選定もこの段階で必要です。

これから民泊を始める人は、制度選びよりも先にステップ2・3の用途地域と条例の確認でつまずくことが多い印象があります。物件を契約する前にこの2点だけでも自治体へ相談しておくと、あとの手戻りをかなり減らせます。

なぜなら、届出前に用途地域や上乗せ条例を確認しないと、住居専用地域では住宅宿泊事業そのものができない場合や、自治体の条例で実施可能な期間がさらに制限される場合があるからです。

チェックインの仕組みづくりは、民泊のチェックイン自動化で具体的な方法を紹介しています。

始めてから効いてくる運営の注意点・よくある失敗

民泊は届出や許可を取って終わりではありません。始めてから効いてくる運営の細部の方が、実は失敗を左右します。

手続きの話に比べると地味ですが、清掃導線・鍵の受け渡し・近隣説明の3点は、制度の手続きよりも軽視されがちな注意点です。

清掃導線については、チェックアウトからチェックインまでの間に清掃・リネン交換・在庫補充を終える時間を、余裕を持って設計しておく必要があります。連泊が途切れる日に清掃業者の予定を確保できないと、次の宿泊者を受け入れられない事態になりかねません。

鍵の受け渡しは、対面での受け渡しが難しい家主不在型では特に見落とせないポイントです。スマートロックやキーボックスを使う場合も、電池切れや通信障害が起きたときの代替手段をあらかじめ用意しておくと安心できます。

近隣説明は、住宅宿泊事業法が事業者に義務付けている「近隣からの苦情への対応」の前段階にあたる取り組みです。運営を始める前に自治会や近隣住民へ簡単な挨拶と連絡先の共有をしておくと、苦情そのものの発生を減らせます。

一方で、こうした運営の工夫をしても、無届出・無許可のまま営業すれば意味がありません。観光庁の資料によると、違法民泊では消防用の備えが整わないまま営業しているケースも少なくありません。「火災が発生しても、火災警報が鳴らない、消火器がない、避難口がわからない等により、初期消火や避難が遅れる危険性が高い」と指摘されています。

なぜなら、こうしたリスクは制度上の届出・許可を経ていない施設で起きやすいためです。まず正規の手続きを終えることが、運営面の安全対策の土台になります。

民泊経営で起きやすい失敗の具体例は、民泊経営でよくある失敗7つにまとめています。

よくある質問(FAQ)

民泊は個人でも始められますか?

個人でも始められます。住宅宿泊事業法の届出、旅館業法の許可、特区民泊の認定は、いずれも法人限定ではないのが実情です。ただし、金融機関からの融資や賃貸物件での実施では、別途、貸主や金融機関の同意が必要になる場合があります。

マンションでも民泊はできますか?

管理規約の確認が前提になります。禁止条項がある物件では、住宅宿泊事業法上の届出要件を満たしていても実施できません。契約前に管理組合へ確認しておくとよいでしょう。

年間180日を超えて民泊を運営することはできますか?

住宅宿泊事業法の届出のままでは、年間提供日数の上限180日を超えて運営することはできません。通年で運営したい場合は、旅館業法の許可(簡易宿所営業など)を取得する必要があります。

民泊の届出や許可にはどのくらい費用がかかりますか?

制度や自治体、物件の状態によって幅が大きいため、本記事では具体的な金額を断定しません。消防用設備の設置や書類作成などで費用が発生するため、事前に物件所在地の自治体や専門家に見積もりを確認することをおすすめします。

まとめ

要するに、民泊の始め方は「制度を選ぶ」「届出前の確認事項を潰す」「届出・許可を得る」「運営体制を整える」という順番で進めると迷いにくくなります。

  • 住宅宿泊事業法(180日上限)・旅館業法(通年可)・特区民泊(対象区域限定)の3制度から、稼働イメージに合う制度を選ぶ
  • 用途地域・自治体の上乗せ条例・管理規約・賃貸借契約は、契約前に確認する
  • 清掃導線・鍵の受け渡し・近隣説明は、始めてから運営を左右する

観光庁の統計によると、令和8年4〜5月分の宿泊日数は全国合計624,088日で、前年同期比138.6%と伸びています。宿泊者数も626,765人(うち外国人62.4%)で、需要の拡大が続く状況です。みんぱくマップでは、一棟貸し民泊の運営経験を踏まえながら、今後も個人オーナー向けの実務情報を発信していきます。集客の考え方は民泊の集客方法でも紹介しているので、あわせてご覧ください。

物件の掲載や運営に関するご相談は、みんぱくマップのお問い合わせフォームから受け付けています。制度選びの段階でも、開業後の運営段階でも、遠慮なくご相談ください。


最終更新: 2026年8月26日

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個人の感想・見解を含みます。法規・税務・条例の内容は自治体や専門家によって解釈が異なる場合があるため、最終的な判断は物件所在地の自治体・専門家にご確認ください。

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